top of page

子どもを持つ人が離婚したいと考えたときのやることリスト

更新日:2022年12月29日

離婚は夫婦関係を解消することですが、子どもがいる場合は、加えて子どもの生活費や生活環境の調整なども考える必要があります。


離婚を考えたときに、まずは離婚を切り出すタイミングから離婚成立までの流れ、そして離婚後の生活をイメージし、必要な準備を前もって行うことが重要です。


これは、離婚を希望する人が父親・母親いずれの立場であっても同様です。この記事では、お子さんを持つ親が離婚を考えた際に事前に準備することについて解説します。



1 離婚成立までに決めておく必要があること・やることリスト


1.1 生活費の確保


・婚姻費用とは


離婚をするにあたって別居は必須ではありませんが、実際は離婚を切り出すタイミングで別居を開始する夫婦は少なくありません。


別居後の生活を考えた際に経済的不安から離婚を躊躇する人も多いと思います。


しかし、夫婦には、別居しても離婚するまで結婚生活を送る上で必要な費用(婚姻費用といいます)を分担する義務があります。


したがって、収入が少ない側は、別居後も収入が多い側に対して生活費等を請求することができます。


・婚姻費用分担額を算出するための資料の確保


実務では、婚姻費用を定めるにあたって「算定表」(※引用検討)を参考にして決めることが通例です。


算定表は、双方の収入金額から婚姻費用を算出するツールです。


具体的には、給与所得者の場合は源泉徴収票の「支払金額」、自営業者の場合は確定申告書の「課税される所得金額」の情報から婚姻費用を算出することになりますから、夫婦双方の源泉徴収票や確定申告書のコピーを用意すると良いでしょう。


婚姻費用というと収入が少ない立場の人のための制度と思われがちですが、収入が高い立場の人も、自分が相手に渡す金額が妥当かどうかを判断することは重要ですから、やはり相手の収入に関する資料を確保することは重要です。


・離婚後の生活費の確保(就職活動、行政支援)


婚姻費用は基本的には離婚するまでの生活費等ですから、永続的に続くものではありません。


そのため、あらかじめ離婚後の生活費を得る方法も考えておくことは重要です。


生活拠点が変わる場合には就職活動や転職活動などの準備を開始することも必要になるでしょう。


また、地域によっては離婚後の親子に対して住宅借り上げに必要な資金の無利息貸付制度など行政の支援制度もありますから、自分が暮らす予定の市区町村に、どういった支援制度があるのかを確認するなど、離婚後の生活やお金に関する情報を集めることも有用です。


1.2 親権者となることを希望するかどうか


親権とは、子を監護、教育するために父母に認められた権利義務で、婚姻中は夫婦に共通する権利(共同親権)となります。


しかし、離婚をした場合は単独親権となるため、未成年者を持つ夫婦が離婚をする際には、夫婦の一方を親権者として決めることが必要です。


多くの場合はお子さんを引き取る側が親権者となります。夫婦双方が親権者になることを希望し、話し合いで解決できない場合は裁判所が決めることになります。


・希望する場合は争いになったときに備えて準備


自分が親権者になることを希望する場合、仮に相手方も親権者となることを希望し、どちらが親権者になるのかについて争いになった場合に備え、準備を行うことも重要です。


・資料の準備(母子手帳、連絡帳の写しなど)、環境調整


裁判所は父と母、どちらが親権者として指定すべきかを「子の利益」に適うか否かの点から判断します。


具体的には、親の監護能力、教育・生活環境、親族の援助の有無、従来の監護状況、子どもの発育状況などを総合的にみて判断することになります。


親権者となることを希望する側は、母子手帳や保育園や学校の連絡帳から自分と子どものかかわり方を示したりすることが必要となりますから、連絡帳の写しや育児日記、子どもとの写真などを保管しておくと良いでしょう。


また、離婚後の子どもとの生活場所、環境も裁判所の判断の際に考慮されますから、例えば離婚後の生活圏を考える際にはサポートをしてくれる親族の近くにすることを検討してみるも良いでしょう。


・親権者を希望しない場合で面会交流を希望する場合は面会交流の条件を決める


様々な事情から親権者になることを希望しない場合、希望できない場合もあるでしょう。


しかし、親権者ではなくとも、子どもにとっての父あるいは母であることは変わりありません。


そこで、法律は、離婚後又は別居中に子どもと離れて暮らす親が、その子と交流することを協議離婚の際に定めるべき事項の一つとして明記しています。


この交流を面会交流といいます。


面会交流を希望する場合には、頻度や実施時間、実施する場所や日程調整のための連絡手段、実施時の費用などを事前に決めることが重要ですから、あらかじめ検討しておくことが重要です。


また、子どもを監護する側との直接のやり取りが困難だと感じる場合は、日程調整や実際の面会交流時の立ち合いなどの支援をする機関もありますから、インターネットなどを利用して事前に調べておくことも有用です。


1.3 住居の確保


別居を開始する前に住居の確保も必要です。ご実家など親族宅で暮らせる場合には、ご家族に相談してみることも良いでしょう。


ご実家に帰ることが難しい場合は新しい住居の確保が必要です。


ここで新たに暮らす住居は、離婚後の生活にもつながりますから、支払い続けることが可能な家賃かどうか、子どもの転園や転校先の有無、通勤の距離などから、不動産の情報を集めると良いでしょう。


1.4 財産分与


・財産分与とは


婚姻中に協力して蓄財した財産等について、一方当事者が相手方に対して分与を求めることを財産分与請求といいます。


例えば、結婚後に購入した不動産の名義が夫であったとしても夫婦が協力して得た財産として財産分与の対象となる場合があります。


・算出するための資料の準備(預金・貯金口座の情報、不動産の査定書等)


財産分与について、裁判所の実務では2分の1に分けることが一般的となっていますが、財産の分け方について法律での決まりはありませんから、当事者間の話し合いで決めることも可能です。


いずれにしても、話し合いの対象となる財産の総額を把握することは重要ですから、相手名義の預貯金の口座の情報や生命保険や年金保険の情報、退職金支給に関する情報なども事前に調べておくと良いでしょう。


また、不動産が財産分与の対象となる場合には、不動産の価値を把握するためにお近くの不動産業者に簡易査定を依頼したり、住宅ローンがある場合は残高を調べておくことも必要です。


なお、財産分与は、離婚時に一緒に行うことが一般的ですが、離婚が成立した日から2年以内であれば財産分与請求は可能です(民法768条1項ただし書)。


この期間は除斥期間と解釈されていて、2年間を過ぎた場合は相手方が任意で応じない限り、その後財産分与請求ができなくなりますので注意が必要です。


1.5 養育費


・養育費月額を算出するための資料の確保


未成年者がいる場合は養育費についても事前に検討することが重要です。


多くの場合、いわゆる「算定表」を参考にして養育費を定めますが、その際には、源泉徴収票、確定申告書の金額を参考にしますから、相手方の収入に関する資料のコピーを用意しておきましょう。


・養育費の支払い条件(終了時期はいつにするか)


また、養育費の支払いについては、金額だけではなく、いつから支払うのか、いつまで支払うのか、進学時や入院など特別な出費を要する事態が生じたときはどうするか、といった条件も定めることが重要です。


あらかじめ、養育費の支払いについて、どのような条件とするか整理しておきましょう。


・養育費は見直しも可能


加えて、養育費の条件は一度定めても合意時に予測できなかった事情の変更が生じた場合などには、離婚後であっても変更することが可能です。


養育費は長期的な支払いになりますが、その間に、父親や母親の収入が変動したり、あるいは再婚して新しい家族を持つことで扶養する人数が変わることもあります。


そういった場合に、養育費の見直しを求めることも、離婚の条件の一つとして考えておくと良いでしょう。


1.6 年金分割


・年金分割とは


夫婦が離婚した場合、婚姻期間中に納付した保険料額に対応する厚生年金・共済年金を分割して、将来、それぞれ自分の年金とすることができる制度を年金分割といいます。


例えばサラリーマンの妻である専業主婦の方などは、婚姻中は自分では保険料を納付していなくとも、年金分割を行うことで納付していたと扱われ、将来受け取る年金に反映されます。


年金分割には2種類の方法があり、当事者間の合意や裁判所の手続きで分割割合を決める「合意分割」と、サラリーマンの妻である専業主婦の方など国民年金第3号被保険者だった方からの請求により年金を2分の1ずつに分割する「3号分割」があります。


原則として3号分割の場合は相手の合意などを得る必要がなく、離婚後、年金事務所で手続きを行うことになりますが、対象となる時期によって異なる場合もありますので、詳しくは年金事務所に相談してみましょう。


・年金分割のための情報通知書の取り寄せ


そこで、自分が「3号分割」の対象なのかなどを確認することが必要です。


年金事務所に対して「年金分割のための情報提供請求書」を提出することで「年金分割のための情報通知書」を取得できますから、事前に行うことも良いでしょう。


1.7 その他


その他、例えば離婚原因として相手方の不貞行為があった場合には、その証拠となる写真やメッセージのやり取りといった資料を集めておくことも必要です。


1.8 離婚に向けて取る手段を決める


・当事者間で話し合いをする場合のメリット・デメリット


いざ、離婚を求めるときに、自分と相手の関係や費用、離婚までの時間などを考えて、どのような方法を取るべきかを決めるにも、事前にメリットやデメリットを調べておくことが必要です。


一番早い方法は当事者間で直接話し合いをする方法でしょう。


この方法では、費用はかかりません。その一方で当事者間で直接話し合う場合は感情的になってしまい冷静な話し合いが難しく話が進まない、話し合いが進まないので時間がかかるといったデメリットもあります。


・財産分与や養育費などが離婚条件に含まれる場合には専門家の確認も大事


また、最終的には養育費などの条件を書面などに残すことになりますが、財産分与や養育費など金銭に関する内容は、仮に約束が守られない事態などが生じた際に備えて法的効果を持たせるような文言にするなど、専門的な知識に基づいた工夫も必要です。


・裁判所での調停を行うメリット・デメリット


離婚の場合、裁判の前に「調停」を行うことが基本です。裁判所が関与しますから専門的知識に基づき離婚の手続きを進めることができます。


その一方で、調停は多くの場合、裁判所に出向く必要があり、平日の半日程度、調停のために時間を取る必要があります。


さらに、裁判所での調停は開催頻度も1か月に1度程度で回数制限も決まっていないため、結果として長期化することが多いというデメリットもあります。


・ADRによる解決


その他に、裁判所とは違う中立公平な第三者が間に入り、仲介を行う離婚方法としてADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決手続)もあります。


・ODRとは、ODRのメリット


ADRの中でもオンラインで実施されるものをODR(Online Dispute Resolution:オンライン裁判外紛争解決手続)といい、チャットなどを利用してトラブルを解決する手段です。


ODRは、中立公平な第三者が仲介し、やるべきことと対応期限を明確にしてくれますから、当事者で直接話し合う場合と比べて、離婚に向けての協議が進みやすいといえます。


また、裁判所での調停のように平日の指定された時間に裁判所に出向く必要もなく、チャット等を利用して実施されるため、仕事や家事の時間との調整がしやすい点もメリットといえるでしょう。


・執行認諾文言付公正証書の作成


それから、離婚に伴う条件について合意ができても、養育費や財産分与などお金に関する約束が守られるかどうか不安に思う方も多いでしょう。


そのような時には、お互いが約束した内容に、給与の差押えなどの強制執行が可能となる効果を持たせる書面にすることが重要です。


このような書面を「執行認諾文言付公正証書」といいます。


執行認諾文言付公正証書は、専門家である「公証人」という公務員が作成する公文書で、金銭の支払いなどの約束をしたにもかかわらず相手方が支払わない場合に、裁判を起こさなくても相手方の預貯金などから強制的に取り立てることができる効果を持つ書面となります。


子どもを持つ親の離婚の場合は養育費の取り決めがある場合が多いと思いますから、執行認諾文言付公正証書の作成も忘れずに行いましょう。